総務省統計局が7月31日に公表した東京都区部の7月分消費者物価指数は、総合が前年同月比2.0%上昇した。生鮮食品を除く総合は1.9%、生鮮食品とエネルギーを除く総合は2.0%だった。6月より伸びが強まり、日本銀行が掲げる2%の物価安定目標に近い水準となった。
東京都区部の指数は全国値より早く発表されるため、物価動向の先行指標として注目される。今回の数字では食料が4.0%上昇し、外食、総菜、菓子、生鮮魚介、肉類、野菜など広い品目で値上がりが続いた。家賃も上昇し、交通ではJR通勤定期の価格改定が大きく影響した。
食料や家賃、交通は、家計が短期間に使用量を減らしにくい支出である。特に所得の低い世帯ほど食料の比重が高いため、総合指数が2.0%でも、実際に感じる家計負担は世帯によって異なる。自炊中心か外食中心か、通勤方法、住居形態によっても差が生じる。
一方、保育所保育料は前年同月比で大きく低下し、総合指数を押し下げた。政策による無償化や負担軽減は、対象家庭には明確な効果がある。しかし、保育サービスを利用しない世帯の支出は減らず、食品や交通の値上がりも相殺されない。平均値だけでは生活実感の分布を捉えにくい理由である。
消費者物価指数には、市場で決まる価格だけでなく、行政による料金変更も反映される。そのため、指数の伸びが鈍いときでも、政策で下がった項目を除けば日常の購入価格が高くなっている場合がある。賃金が同じ速度で増えなければ、実質的な購買力は低下する。
今後は全国の7月指数と賃金統計を合わせて見る必要がある。名目賃金が食料や交通の伸びを上回るか、サービス価格の上昇が持続するかが、2%前後の物価上昇を経済の安定した循環と評価できるかを左右する。
指数は平均的な消費構成を基に作られるため、各家庭の実感とは一致しない。自動車を使わない世帯、子どものいない世帯、家賃更新の時期が異なる世帯では、同じ東京23区でも負担の内訳が変わる。政策による無償化が指数を下げた場合には、対象となる世帯数と財政負担も合わせて見る必要がある。物価統計は生活の変化を示す基礎資料だが、単一の数字で家計全体を代表させない読み方が求められる。