東京都美術館は7月31日、開館100周年記念のアート・コミュニケーション展「みる、つながる、ひらく」を始めた。映像、作品、対話を通じて、美術館で異なる人がどのように一緒に鑑賞できるかを考える。入場は無料で、8月10日まで開かれる。
会場には触れられる作品が置かれ、説明の一部に点字、音声読み上げ、触図が用意された。手話動画、筆談、UDトークによる文字支援もあり、アート・コミュニケータが来場者の対話を助ける。文化のアクセシビリティを、入口の段差解消だけでなく、作品、説明、会話の設計として扱っている。
視覚芸術は「見ること」を前提にしやすい。触れられる作品や触図は、視覚障害のある人に別の感覚経路を提供する。手話動画や文字情報は、音声解説だけでは届かない人に情報を開く。さらに、アート・コミュニケーションは、正解を教えるのではなく、来場者同士が感じたことを言葉にする機会をつくる。
こうした仕組みは、障害のある人だけの特別対応ではない。子ども、高齢者、日本語を母語としない人、美術館に慣れていない人にも、説明を理解し、質問し、滞在するための助けになる。無料であることと、参加しやすいことは同じではない。
東京都美術館は長年、「すべての人に開かれた美術館」を掲げてきた。開館100周年の展示は、その理念を具体的な設備と人的支援に変える試みである。一方、記念展だけで終われば、効果は限定的だ。
今後の評価点は、点字、音声読み上げ、手話動画、アート・コミュニケータの経験が、通常の企画展や常設サービスに残るかどうかである。アクセシビリティを後付けではなく、企画段階から組み込めるかが、美術館の次の100年を左右する。