総務省統計局が7月31日に公表した労働力調査によると、6月の完全失業率は季節調整値で2.5%となり、前月と同じだった。就業者は6890万人で、前年同月より17万人増え、5か月連続の増加となった。
一方、完全失業者は178万人で、前年同月より2万人増えた。増加は11か月連続である。就業者と失業者が同時に増えるのは、働く意思を持つ人が労働市場へ戻る、転職のために一時的に職を離れる、産業間の移動に時間がかかるなど、複数の動きが重なるためだ。
日本では人口減少が続き、介護、物流、飲食、建設、ITなど多くの分野で人手不足が深刻である。それでも、求人があることと、求職者がすぐ採用されることは同じではない。勤務地、必要な技能、賃金、労働時間の条件が合わなければ、求人と完全失業者は並存する。
完全失業率が低いことは労働市場の底堅さを示すが、雇用の質までは表さない。就業者の増加が短時間勤務や非正規雇用に偏れば、世帯所得の伸びは限定される。物価が2%前後で上昇する中では、名目賃金だけでなく実質賃金が改善するかが家計にとって重要になる。
11か月連続で完全失業者が増えている点は注意を要する。ただし、今回の基本集計だけで、景気悪化による離職と、自発的な転職活動を正確に分けることはできない。失業率が横ばいだから問題がないとも、失業者増だけで景気後退とも判断すべきではない。
次に見るべき指標は、厚生労働省の有効求人倍率、産業別の就業者、賃金と労働時間である。企業の採用意欲と労働者の所得が同時に伸びているかを確認して初めて、低い完全失業率が生活の安定につながっているかを評価できる。
完全失業者には、会社都合で仕事を失った人だけでなく、より良い条件を求めて自発的に離職した人、新たに求職を始めた人も含まれる。理由別の内訳や失業期間を見ることで、景気悪化による失業と労働移動を区別しやすくなる。また、就業者数が増えても、一人当たりの労働時間が短くなれば総労働投入は伸びない。雇用の量と質を同時に確認する必要がある。
労働市場の逼迫が賃上げにつながるかは企業規模でも異なる。人手不足でも価格転嫁が難しい中小企業では、採用を増やせず、既存の従業員へ負担が集中することがある。