旧統一教会(世界平和統一家庭連合)をめぐる高額献金や霊感商法の問題について、東京地方裁判所は3月25日、国の請求を認めて同教団に対し解散命令を出した。法令違反を理由とした宗教法人への解散命令は、オウム真理教などに続いて3例目。教団側は強く反発し、即時抗告する方針を示している。
文部科学省は2022年、宗教法人法に基づき旧統一教会の解散命令を東京地裁に請求した。今回の決定では、裁判所が過去の民事訴訟や被害申告をもとに、2009年までに1500人以上、190億円超の被害が確認されたことを認定。「コンプライアンス指導後も改善が見られず、現在も看過できない被害が続いている」として、解散命令が妥当との判断を下した。
鈴木謙也裁判長は「教義と密接に結びついた献金・勧誘行為が組織的かつ継続的に行われ、教団は根本的な対策を講じなかった」と指摘。「法人格を失わせる以外に有効な手段は考えにくい」と述べた。
今回の解散命令は、民法上の不法行為を理由とした初の事例でもある。これに対し、教団側は「献金は宗教活動の一環であり、刑事事件は一件もない」として、宗教の自由を侵害する不当な判断であると反論している。
記者会見で教団の田中富広会長は、「当法人が悪質な団体であるという判断は到底受け入れられない。最後まで闘う」と述べ、東京高裁に即時抗告する方針を示した。
文部科学相の阿部俊子氏は「主張が認められたものと受け止めている。引き続き対応に万全を期す」と述べた。
一方、元信者の支援にあたる「全国統一教会被害対策弁護団」は、「多くの被害者の声に裁判所が耳を傾けたことを評価する」としつつ、「被害者の救済と今後の抑止に向けて取り組みを進める必要がある」と強調した。
宗教2世の支援団体「宗教2世問題ネットワーク」からは、「解散は通過点であり、経済的困窮を抱える被害者への支援が必要だ」との声も上がった。
旧統一教会に対する解散命令は、宗教法人の活動の在り方と信教の自由の限界を問う重要な判断である。識者の田近肇・近畿大学教授は「宗教法人は公共の福祉を害さない形で活動する必要があり、今回の判断は今後の宗教団体の在り方を問い直す契機になる」と話している。
今後、教団による即時抗告の行方や、被害者救済の具体策、宗教法人制度の見直しなどが注目される。(Source)
コメント